このコーナーでは私が今まで読んできた少女マンガたちを紹介します。姉の影響で幼少の頃より少女マンガに触れてきました。大人になった今、再び読み直すことで当時とはまた違った感想を抱いたりするでしょうから、今から楽しみです。80年代・90年代・00年代〜と幅広い年代の作品を紹介していきたいと思います。

第一回は1987年より連載Papa told me(パパ トールド ミー)です!

 

※少女マンガは「少女とかつて少女だった人」のために存在するもので、ひとつのサンクチュアリ(聖域)であることはその界隈では常識です。決して、私のような35歳の独身男性があーだこーだ言うものではない事は重々承知しています。この先の記事は個人的な偏った目線で少女マンガを楽しんでいるおっさんの感想です。的外れな事や不愉快なことを書くかもしれません。少女漫画を愛する方々には、どうぞ、ご寛容のほどお願い申し上げます。 m(_ _)m管理人より

 

 

Papa told me 榛野なな恵(はるの ななえ)

 

掲載誌 「ヤングユー」1987年〜全27
その後2012年から2020年まで年一冊のペースで新刊がマーガレットコミックスから発売されている。(2015年を除く)
作者・他作品 榛野なな恵(はるの ななえ)
2000年〜「ピエタ」(全2巻)
2002年〜「パンテオン」(全4巻)
作者・来歴

【Wikiより】

・福島県出身の大学は文学部哲学科
1989年に同作で小学館漫画賞(少女部門)受賞。
ちなみに小学館漫画賞は1990年に「王家の紋章」,1992年「BASARA」,1994年「赤ちゃんと僕」など有名な作品が受賞している歴史ある賞。「バサラ」(全27巻)と「赤僕」(全18巻)は姉が持っていたのでそこからハマった。王家の紋章もあったし読んでいたが途中で挫折。この作品、2021年未だ終わらず→(1976年〜既刊66巻)

 

1行あらすじ

小学生「的場知世(まとば ちせ)」のするどい感性で切り取る日常。

 

 

主要キャラクター

1:「的場知世(まとば ちせ)」/ 小学生

 

 ・ロングヘアのオシャレさん
 ・読書好き。野球のナイター好き。
 ・好きな男性のタイプは「お父さん」

 

①1巻だけ読むと知世の大人びた思考や感性は「こいつ転生者じゃねぇの?」と疑いたくなるレベル。しかし、読み進めるうちに「大人」にならなければいけない理由が彼女には明確にあるらしく…。物腰は柔らかいのに周囲に流されない「芯の強さ」はもともとの素質もあるだろうがその理由に起因している。相手の心情を理解し、自分の意見を相手に伝える力をもつ「聡明」な小学生の女の子。

 

        

 

②この作品は2003年にNHKでドラマ化されている。その時の知世役は関西弁の豊田 眞唯(とよだ まい)だったらしい。2010年代なら間違いなく芦田 愛菜(あしだ まな)が演じていただろう。それぐらい彼女は大人びている。

 

        

 

③精神年齢の高さや父親への依存性は「家庭環境」にあるようだが、彼女の聡明さは「読書好き」であるところが大きいように思える。部屋に置いてあるぬいぐるみや作中に出てくるモノローグや会話から『不思議の国のアリス』や『オズの魔法使い』系のお話を読んでいるようだ。

 

        

 

大人びている精神年齢不詳、などと評される彼女だが、作品を読み進めていくと彼女が年相応の繊細な女の子であることがわかる。いや、…案外私たちも子供の頃は“ああ”だったかもしれない。忘れてしまったことや気づかないふりしてきたものを彼女はしっかり見据えているだけなのかも──。

 

       

 

⑤1巻だけ読むと「転生したら好きな人の娘だった件」だが、3巻まで読んだ今なら彼女を『大人になろうとしている聡明な女の子』と評したい。

 

         

とにかくおしゃれ。学校にも制服ではなく私服で通っているが同じ服を着ているのをみたことがない。髪型も服に合わせて三つ編みだったり、サイドにまとめたりしている。帽子やリボンも彼女にとってマストアイテム(絶対必要)だ。アニメ化したら知世ちゃんの作画設定の人はおそらく死ぬ。アニメーターも道連れ。

 

2:「的場信吉(まとば しんきち)」/作家

 

・マンションに娘の知世と2人暮らし。
・高身長のモデル体型。作品には女性ファンが多くモテる。
・元記者。ある画家のインタビューの際に出会った女性と大恋愛の末に結婚したらしいが‥‥。

 

 

 

①作家と作中では紹介されているが「恋愛小説」は苦手と答えているのでどちらかと言うと「物書き」。エッセイ集などを出して好評なようだが、ファンに愛想を振りまくサイン会などはあまり気乗りしない模様。サイン会をこっそり覗きにきた娘の姿を発見してばつが悪そうにしている。

 

 

②作家らしくキザなセリフもさらっと言えるが、ナンパな雰囲気は皆無。ファンに愛想を振りまくことをダサいと感じる自分の「プライド」を諌め、「大人」な対応を取ろうと努力するも、「納得」できずにもんもんとする様子は「物書き」であり、子供を持つ「父親」という感じ。

 

 

③恋愛小説は最も不得意な分野らしいが書こうと決めている「」があるとのこと。それは世界に1冊だけ製本される予定。ただ1人の読者のためにだけ書かれる、ある男女の恋愛の「物語」らしいが……。

 

 

④娘である「知世」とずっと2人暮らしをしてきた。そのため知世の感情の機微には敏感で、彼女が何か抱え込んでいるのを察するとを自分で言いだすまで待ち、それをきちんと聞いてやる。そして、彼女の意に沿う対応を取る。知世自身が自分の「わがまま」自覚し、それを抑え込んで「大人」な振る舞いをするのを見て、《子供の自分をもっと出していいんだよ》とモノローグで語る様子は知世の一番の理解者であり、あぁ、やっぱり似た者親子なんだなと感じる。

 

 

 

たしかに我々には大きく欠けた部分がありますが、
それ故に見えてくるものもあるんですよ。

この世界がどんな形に作られているのか
自分がどこに置かれて生きているのか

3巻エピソード14「ワイルド ストロベリー」より

 

 

 

3:「的場百合子(まとば ゆりこ)」/キャリアウーマン

 

・大手化粧品会社に勤め新商品の企画などで実績をあげている。
・知世の叔母。「ゆりこちゃん」「ちせちゃん」と呼び合う仲。
・仕事ができるが故に信頼していた直属の上司に陰口を叩かれたり、母親から理解のない言葉を浴びせられたりと「キャリアウーマン」としての苦悩を味わう‥‥。

 

 

①「キャリアウーマン」という言葉もジェンダーフリー(男女の役割にとらわれない)の2021年の現代では死語になりつつあるかもしれない。けれど女性に対するおじさんたちの意識は30年以上前と何も変わらないように感じる。
この作品が世に出た1987年は男女雇用機会均等法(1985年制定)が出たばかりの頃。女性の管理職や技術職が実績を上げるのをやっかむ風潮は現在の比ではない辛い時代だったはず。百合子(ゆりこ)が周りの理解や協力が得られず傷ついているさまを見ると、自分の職歴を思い出し深く共感してしまう。(ジャンルでいえば私も“おじさん”にあたるがそこは見逃してほしい)
EPISODE・2 『ローズ ウォーター』では上司の陰口に傷心した百合子がついお花を買ってしまう場面がある。傷ついた心が潤い(うるおい)や癒しを無意識に求めているからだろうか?それを持ってふらりと知世たちの家を訪ね、何気ない会話を交わす。彼女は何も語らない。こんな辛いことがあったとか、愚痴をこぼすことはせず、でもしっかり傷ついている。そのままテーブルで眠りこけてしまう彼女に知世たち親子がこんな言葉をかける。

「──疲れているんだろうな」

 

『うん』
『そうだね、きっとそうだね』

1巻エピソード2「ローズ ウォーター」より
知世たちの「優しさ」が身にしみる。そして、自分に「大丈夫」と言い聞かせ、彼女はまた歩き出す。
──選んだ私たちは、みんな1人ぼっち。それでも夢を見る。まだ覚めない私の夢を……Episode2『ローズウォーター』
②2巻収録のエピソード11「スターダストリボン」に登場する「冬木」さん。彼女もお店で働きながらジュエリーデザインの学校に通う苦労人だ。その冬木さん、幼馴染の婚約者から「結婚」を求められているらしくこんなセリフを言われる。

金のかかる趣味だな。
もう十分じゃないのかな?
早く帰ってきてほしい。そして結婚しよう。
君のご両親もそれを望んでおられる。
今はこういう生活が楽しんだろうけど、後になって振り返ってみれば、きっと時間を無駄に費やしたと思うようになるさ。

婚約者:塚田氏
なんて物言いだ。同じ「人間」と話しているとはとても思えない。なぜ応援してやらない?幼馴染が頑張って「」を叶えようと努力しているのに、何故にそれを「無駄」などと口にできる?このすっとこどっこいめ。──まぁ、30年以上前の作品だから、この「時代」の価値観といえばそれまでなんだろうけど……いや、やっぱり駄目だね、仮にも結婚を前提に付き合っている間柄の「女性」の気持ちを蔑ろにする言葉、正気とは思えない。自分の将来のパートナーになるかもしれない人間の心情を慮る(おもんぱかる)ことができないなんて人間失格だ、こんちくしょうめ
③3巻収録のエピソード13「ワーキングガール」でスポットを浴びる「北原さん」。彼女は信吉(しんきち)の担当編集であり作品はもちろん、彼自身にも淡い「恋心」を抱いているように思える。ある時、信吉を結婚相手としてだけ評価する会社の後輩をたしなめるのだが、そんな彼女にミーハーお嬢様系後輩はこんなセリフを吐く。

そういうのって、結局、悲しいんじゃありません?
言い訳みたいに聞こえるわ。
幸福を見つけられない自分へのいいわけ。

ご令嬢:高輪さん
あぁ、いるね、こういう女。「女性」ではなくあえて「」と形容させて頂きたい。彼女たちはたくましい、と思う反面、将来どうせ苦労して捕まえた獲物(旦那)に浮気されて、慰謝料を盛大にぶんどってそれを元手にブランドとか立ち上げて、「働く女性」の代表みたいな面をする未来が一瞬で見えてしまうタイプだ。自分がバカにして否定したものにあっさり乗り換えるフットワークの軽さと面の皮の厚さを常備し、恵まれた外見に寄ってくる男どもを手玉に取る。そうやって世の中を難なく渡っていく彼女たちには「畏敬の念」を覚える。つまりさ、怖いんだよ、あんたら、人として
④化粧品会社でキャリアを積む百合子(ゆりこ)
働きながらジュエリーデザインを学ぶ冬木(ふゆき)さん
出版社の編集者は徹夜が当たり前の北原(きたはら)さん
彼女たちは周りの心無い言葉に傷つき、心で泣いている。しかし、それでも、その歩みは止めない。可能性を、自分を、理想を、諦めたくないからだ。戦う彼女たちは、その苦しみや心の痛みを、己の背中を押す強い推進力にして、前に進む。私たちが羨むような高くて遠いところに駆けて行く。──いつかきっと、輝きながら。そんな彼女たちに「敬意を評し」、エールを送りたい。あなたたちの進む道に幸あらんことを──。
──いつか輝けるかもしれない。今はまだ、あの星くずのように淡い光だけれども‥‥Episode11『スターダストリボン』
──あの人の優しさが、落ち込んだ私に勇気をくれる。がんばれ、ワーキングガール!Episode13『ワーキングガール』

 

私の思い出─父と娘を描いたマンガ

私が『Papa told me』を読み返すきっかけになったのは私がひいきにしているラジオ番組「少女漫画喫茶」さんで紹介されていたからだ。

 【少女漫画喫茶】https://radiotalk.jp/program/23530

たしか去年の放送「おしゃれな少女漫画特集」で紹介されていたと思うのだが、その時にパーソナリティーの2人がとにかく知世ちゃんがオシャレだった!真似した!と鼻息荒く語っていた。…あれ、俺そのマンガ読んだことあるな〜と、ぼんやり表紙の絵は思い出せる。しかし、内容は思い出せない。というわけで、姉の家にくだんの漫画を借りに行ったら27冊もあるじゃないか!びっくりした。そして思い出した。小学生の頃に確かに読んだが、理解できずに挫折したのだ

 

その頃の私といえば、かめはめ波邪王炎殺黒龍波を出すためのイメージトレーニングを日課にしているようなバカな子供だったので『Papa told me』のような繊細な物語を読むことができなかったのだ。ただ、やはりというか、少女漫画喫茶のお二人も言及しているように知世ちゃんの都会の雰囲気というか、オシャレさ、ファッショナブルな出で立ちだけは強く印象に残っていた。

 

1巻から3巻まで読んでの紹介記事を書いてみたのだがひとつわかったことがある。こんな繊細な心を切り取って、常識を疑うような考え方を教えてくれる漫画をよんでいる「女の子たち」に棒切れ片手にアバンストラッシュ九頭龍閃を練習しているような「男子たち」が精神性の高さで敵うわけない。いや、こんな物語を読んで育ってきたら俺たちなんて動物園のサルにしか見えないと思うんだけど、どうだろうか?あの頃に戻って聞いてみたい。

 

その精神性の低さから、『Papa told me』を読むことができず、少年漫画や青年漫画を主に読んできた私だが、「父親と娘」で思い出すマンガで代表的なものと言えば、


あずまきよひこ先生、よつばと(月刊コミック電撃大王)


雨隠ギド先生、甘々と稲妻(good!アフタヌーン)


宇仁田ゆみ先生、 うさぎドロップ(フィール・ヤング)


これらの作品からは子供って不思議で、エネルギーにあふれていて、かわいいなぁというメッセージと、「子育て」って大変なんだな、子育てっておもしろいんだなということを学ばせてもらった。

 

『Papa told me』からは子供って〜という感想ではなく、心が傷つく時ってこんな時なんだ、という女の子の繊細さをひたすら学んでいる。社会人生活も17年目になると、知世ちゃんかわいい!ではなく、百合子のような働く女性たちの悩みの方に共感してしまい、作中のくされポンチな男ども(上司や幼馴染)やサイコパスな女たち(後輩や母親)に「てめぇこら!」と怒っている。

 

『Papa told me』でネット検索すると、『Papa told me』の名言集や、「すごく好き!」、「うまく言葉にできないけれど私にとって大切な物語です」、など女の子たちにとって「面白い作品」というよりは、その「精神性に強く影響を与えた作品」であることがわかる。作者の榛野先生が哲学を学んだ人であるからか、日常の切り取り方、この作品では的場知世の考え方、視線にハッとさせられることが多かった。

 

私は生まれてから全部お父さんといっしょだけど
お父さんは、私のお父さんじゃなかった時間の方がずっと長いんだ‥

 

でもさ、なんかへん。 

2巻エピソード10「ソーダ ファウンテン」より

 

子供の時は全くわからなかったけど、今ならなんとなくわかる。彼女たちが強くあろうとする姿や大人になりたいと口にする理由はきっとその精神性の高さに由来していたのだろう。自分の中の「不安」と対峙する時、きちんと「傷つく」ということが私たち子供を「大人」にしていく。けれど、そこにはだれかの「優しさ」が必要なんだよなぁ…とか、『Papa told me』を読んでいるといろいろ考えてしまう。まだ24冊以上もあるのでゆっくり読んで、心に残るお話をまた紹介していきたい。ではでは。

 

1話完結
オシャレ
一気読み 休憩時間とかに1話づつ大切に読んでいきたい
ポエム 読んだ後は思わず書いちゃうね。

 

本当は毎回3作品づつ紹介しようと考えていたが思った以上に時間がかかったので、一作品づつにしました。次回は白泉社・花とゆめコミックス、猫山宮緒先生の今日もみんな元気ですを紹介します!

BGM:1988年「TRAIN-TRAIN」『ローリング☆ガールズver.
→https://www.youtube.com/watch?v=4dAldFJ-2xY

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