2021年1月3・4日連続で放送される木村拓哉主演のドラマ『教場Ⅱ』。年末休暇に入り一息ついた私はその放送を心待ちにしている。そんな私の手元には「警察官」のしょうもなさを描いた傑作マンガ「ハコヅメ」がある……。せっかくなので一年前に放送された『教場』の再編集版を見ながらドラマ「教場(きょうじょう)」での警察学校の様子と漫画「ハコヅメ」での警察学校時代のエピソード等を比較して“楽しんでみたい。最も恐れられていると書いて【最恐】の教官・風間公親(かざま・きみちか)。彼の鋭い眼力は『ハコヅメ』のキャラクターたちをどう評価するのか?

 

 

原作小説:教場(きょうじょう)

作品ジャンル 警察学校を舞台にした学園・ミステリ小説
作者・既刊 長岡弘樹(ながおか ひろき)
シリーズに「教場」「教場2
」「教場0 刑事指導官・風間公親」、2019年12月発売の最新作「風間教場」の4作がある。
【公式】
Webサイト
ドラマPV https://www.youtube.com/watch?v=lwovrUrbfqI&feature=emb_logo

 

 

モーニングコミック:ハコヅメ〜交番女子の逆襲

掲載誌 週刊モーニング(毎週木曜発売
作者 泰三子(やす みこ
期間・完結 2017年12月〜連載中/既刊15
作者経歴 10年間の勤務経歴を持つガチの元警察官。しょうもない人たちが頑張っている」を伝えたいと漫画家に転身。タイトルの「ハコ」とは「交番」を意味する隠語。警察官しか読まない昇任試験対策本の「警察公論」に2020年から出張連載しているらしいが、大丈夫か?いろんな意味で。ちなみに人気連載は「ひとりで学ぶ刑法入門」
PV(youtube) 【公式】morningmanga
https://www.youtube.com/watch?v=LWorwCVJJvY

 

1行あらすじ:
交番勤務の新人警察官を中心にその内情を描く下ネタの実録ケーサツ24時」

 

 

駆け足訓練

警察官は体力仕事。事あるごとに「駆け足」の訓練がある。ドラマ『教場』では風間教官の指示で突如ランニング25週を言い渡される。理不尽ないびりにみえるそれは、実はある「事案」を探るための布石だったのだ……。とはいえ、夕飯食べた後の400m×25周=10km近く走らされるのは辛い。

 


32歳既婚の元ボクサーの日下部(くさかべ)は体力や実技に秀でるが学科はからっきし。↑(三浦翔平が演じる)

 

漫画『ハコヅメ』でも警察学校でひたすら走らされる。真夏の炎天下、息をするだけで苦しい中で一時間近く走るのは「拷問」とほぼ同義である。あれは辛い。何より列になっての「集団走」が辛い。集団で走ることの何が辛いかって?誰も脱落しないから、「自分」も走るのをやめられない……。足がバカになって肉体的限界を超えて、その場に倒れこむと、教官や同期が両脇を抱えて無理やり走らせる─。冷静になるとあれ「拷問」だよね、教官?……。

 

 

優しさ、荒々しくね?

ハコヅメ第75話 「育ての鬼」より

 

元インテリアコーディネータの楠本(えのもと)↑姉御肌の性格だが警察官を志した本当の理由は…(大島優子が演じる)

 

重さ5〜6kg近くあるジュラルミン製の盾を抱えてのランニング。筋力的に不利だろうと男女関係なく持たされて走る。いつまで走らされるのか?それもあいまいなため精神的な消耗も激しい。

 

 

 

ドラマ『教場』でも限界を迎えた同期の盾を代わりに持ってやるシーンがある。私からしたら「ありがたい」とか「すごいなぁ、負けられない」なんて素直に感心する場面なのだが……

 

 

あぁ、そういう感じ方もあるのか。確かに、本人は良かれと思ってやっていることでも「見下されてる」と感じることもある。ドラマ「教場」の主人公の1人「宮坂(みやさか)」もその辺わかっていなくて危うく同期に殺されかけたのだから、私が思っている以上に感じ方はひとそれぞれで、「人をかばう」という行為には注意しないといけない。まぁ、平田さんは色々こじらせていたっぽいし、サイコパス要素もあるからあそこまで極端な人はそうそういないと信じたいけど。

 

 

俺の嫌いなもの一番目はなんでしょう?──お前だよ、宮坂!」で有名なサイコパス平田さん。今まで受けてきた理不尽な仕打ちの不満や鬱屈した感情など、色々溜まっていたものが爆発すると人はこうなる‥‥適度に発散しよう。カラオケ行こう。カラオケ。

 

同期たち

 

サイコパスで思い出したけどドラマ『教場』には3人のヤベーやつが登場する。

1人目:気弱でどんくさい雰囲気を醸し出している「平田」さん【武器はサンポール】

2人目:調子が良くて同期たちにいろいろ取引を持ちかけている「樫村」【武器はコネと情報】

3人目:射撃訓練では成績優秀、教場での受け応えも的確な「南原」【武器は密造ハンドガン】

 

 

警察官にもヤベーやつはいる。とはいえ、清廉潔白で、愚直で、使命感に燃えたやつだけが「警察官」になるべきだとは私は思わない。平田さんの起こした道連れ自殺未遂の「行動力」。それを別方向に向ければ良かったのだ。風間教官に胸ぐらを掴まれて恫喝された時も「辞めたって構わない!」と逆ギレを起こしていた彼は私には「強く」みえた。悪知恵の働く樫村なんかはそのコミュ力を使えば「情報屋」を抱えるやり手の刑事になっていたかも。南原さんも「銃」が好きで射撃も優秀なら「狙撃手」になっていたかもしれない。

漫画『ハコヅメ』にもヤベーやつらはいっぱいいる。人たらしの「取り調べの天才」、要領がよく人に取り入るのが上手い「くノ一捜査官」、仕事内容が新撰組に似てるからという理由で警察に入った「新撰組オタク」。一歩間違えれば「犯罪者」側になっていてもおかしくない能力とバイタリティを持つ人たちだ。

ドラマ『教場』の退校させられたサイコパス3人と漫画『ハコヅメ』のヤバい能力を持つ警察官たち、彼らは何が違うのか?それはきっとその能力を「自分」の利の為にだけ使うか、「誰か」の助けになる為に使えるかの違いだと思う。

 

こういう仕事だし──いろんな種類の人間の、いろんな力が、うちの組織には必要なんじゃないかな

ハコヅメ第77話「天然と小悪党」より

 

 

警察官の仕事は「誰か」の助けになれること。苦しんでる人の「」に耳を傾けること。同じような苦しみを受けていても、いくら能力があっても、自分のことしか考えられない、それを自分のためだけにしか使おうとしないのならそれは「犯罪者予備軍」である。サイコイパス3人組はその辺の本性を風間教官に見抜かれていたのだろう。そう思う…

警察官の勉強

 

警察官はお仕事がいっぱい。現場での仕事以外にも書類作成で忙殺されているらしい。風間教官もペーパーワークをするぐらいなら1分でも多く見回りを増やせと言っている。文字通り「お巡りさん」なのだが警察官として職務を執行するには多くの知識が必要となる。「憲法・行政法・刑法・刑事訴訟法・民法」などの見るだけで頭が痛くなる法学。さらに事件・事故の取扱いなどの実務に関する勉強もずっっとしていかなければならない‥‥

 

皆が寝静まったあと補習のための勉強をする日下部(くさかべ)。法律関係の文章って頭に入ってこないんだよねぇ‥

 

 

ドラマ『教場』の主人公の1人、元ボクサーの日下部(くさかべ)。運動能力は高いが彼は学科の成績が最下位で焦っていた。そこをサイコパス「樫村(かしむら)」につけ込まれ、成績を上げるために裏取引をしてしまう‥‥しかし、風間教官の眼力に全てを見抜かれ、樫村ともども「退校届け」を突きつけられる。絶望的状況にサイコパス樫村は「ハハハハ」と観念した笑いをあげ、日下部は風間教官に泣きつく。しかし、その願いは一蹴され、なおも辞めろと強要される。日下部は土下座して顔をぐしゃぐしゃにして叫ぶ「今度は、今度こそは…ふるい落とされるわけにはいかないんだよ!」と。──しがみつく32歳既婚子持ちの元4回戦ボクサーの「魂の叫び」に風間教官は「おもしろい‥‥」とつぶやきこう続ける。

 

篩(ふるい)、その逆もある。残すべき人材がいればマンツーマンで指導してでも残す。ここはそういう場所だ。

ドラマ『教場』より 風間公親(かざま きみちか)

 

 

三浦翔平」という名前は聞くけどよく知らなかった私はこの演技で彼を好きになった。挫折を知った元ボクサーが家族のために「スマートな外面」を脱ぎ捨て、なりふり構わずしがみつく姿…正直、萌える。さらに「弱い自分」を認め、そこから再起をはかる決意をした凛々しい顔……うん、萌える!

 

「昇任試験勉強」は──大卒は採用後2年、それ以外は4年経てば全員受験させられるから、退官までずっと、勉強からは逃げられないよ。

ハコヅメ第91話「裏取引資料」より

 

日下部さんには奥さんとお子さんのためにもなるべく早く「昇任」して給料たくさん稼いで欲しいなぁ。俺も資格とって給料上がるよう頑張ろう。

 

教官について

 

木村拓哉演じる警察学校の教官・風間公親(かざま きみちか)。存在感が圧倒的だ。画面に映るだけで空気がピリッとするのがわかる。キムタク主演で一番好きなワンツーは「忠臣蔵1/47(2001年)」と「武士の一分(2006年)」なんだけどまさか2020年にそれを更新するとは思わなかった。

風間教官は常に「退校届け」を持ち歩いているのか、ここぞというタイミングで生徒に突きつけてくる。決め台詞が「君にはここを辞めてもらう」なのだから生徒からしたら一瞬も気が抜けない。《最恐》の教官の異名は伊達じゃない。

サインしてもってこい。明日か明後日か?なんなら、今でもいい─

ドラマ『教場』より 風間公親(かざま きみちか)

 

 

主人公の1人で成績トップでクールな「都築(つづき)」さん。「警官には色々と文句がある」「警官が嫌いだ」「風間教官の過去に興味がある」と最初はいけ好かないやつだと思っていたが、風間教官の「追い込み」に感情を爆発させ、その本音を吐露する姿に泣いてしまった。あぁ、こいつ好き。都築さん、推せる。都築さんみたいな警察官がいてくれたら私も「あの時」救われたのにと思う。しかし、本人すら自覚していない「本音」をギリギリの極限状態に追い込んで引き出すあの手腕、風間公親‥‥‥一体どんな過去を持っているのか?

 

 

漫画『ハコヅメ』の警察学校の教官たちも「鬼教官」と呼んで差し支えのない厳しさを持ち合わせている。けど、それは不条理で理不尽で過酷な「警察官」の仕事を知っているからこそ。「現場」で、日々奮闘している同僚たちのもとに、共に戦うことができる「警察官」を送り出せるように。そのための厳しさと温かさ。風間教官もきっとそうなのだろう。

 

 

主人公の1人、巻き込まれ体質の「宮坂(みやさか)」さん。死にそうになっていた所を警察官に助けられたから。「憧れ」という至極真っ当な理由で警察官を目指した彼。その「甘さ」をこの警察学校での極限状態の中で自覚し、そこからスタートする彼に風間教官がかけた一言。

 

「死ぬなよ」

ドラマ『教場』より 風間公親(かざま きみちか)

 

‥‥めちゃくちゃかっこいい。──ドラマの終盤、卒業式で一人一人に声をかける風間教官の「温かさ」にシビれてしまった。「やりかた」に問題がすごーくあるが、それでも、その教官としての「厳しさと温かさ」は紛れもなく本物だった。

 

 

決して忘れるな。苦しんでいる人の声に耳を傾けること。それが警察官の仕事だ。──全員、合格だ。卒業を認める。

ドラマ『教場』より 風間公親(かざま きみちか)

 

体力的キツさ
精神的に追い込まれる
同期の愛 あったり、なかったり。
風間教官の厳しさ温かさ

 

 

というわけで、2021年1月3・4日の新春ドラマ「教場Ⅱ」を観る前に、前作ドラマ「教場」のスペシャル編集版を観て、漫画「ハコヅメ」を読み直してみた。比較してどうだったか?よりあらためて「警察官」って大変なお仕事だなぁと頭の下がる思いがする。(昔受けた警官の横暴を許す気は無いが)

ドラマのように極限状態に置かれた人間の「本性」を暴いていくミステリ的な面白さが「教場」にはある。警察官の「しょうもなさ」や悲哀、毒を描いた「ハコヅメ」は、読むたびに笑わせてもらっている。両者に共通点があるとすれば、どちらも「人間」をきちんと描いていることだろうか。立派なところも、ダメなところも、嘘も本音も、キレイや汚いも、全て私たち「人間」なのだ。それを思い出させてくれる─。

「教場Ⅱ」が面白かったら、原作小説のエピソードゼロ「教場0 刑事指導官・風間公親」と最新作「風間教場」を買おうと思っている。モーニングコミック「ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜」は2020年11月に最新15巻が発売された。興味のある方はこちらから試し読み今なら3巻分無料で読めるよ(2021年1月1日)【公式コミックデイズ】https://comic-days.com/episode/10834108156629726452 

 

ちなみに作者/泰三子(やすみこ)先生のインタビュー記事もやたらと面白い、ぜひ。
ドラマ楽しみだなー。     BGM:「ポリスマンファック」by.マキシマムザホルモン

 

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