大人でも楽しめる異世界転生マンガの2020年11月のおすすめを3作品紹介!いわゆるチート能力で最強バトル漫画や人間以外に転生してしまった系ではない。転生しようと私は私、生き方はそのままチート能力なんかなくたってどこであろうと自分の生き方を貫く彼や彼女達に現代日本を生きる私たちも勇気付けられる!この漫画を読むことで閉塞感(つまらない・息苦しさ)を感じているあなたは生きるヒントを得るかも──。

⑴「パリピ孔明」─三国志から東京渋谷へ

 

 

掲載誌 コミックDAYS
作者・他作品 原作/四葉夕ト(よつばゆうと)・エリィ・ゴールデンと悪戯な転換
作画/小川亮(おがわりょう)・『私人警察』(全3巻) 
期間・完結 2019年12月〜連載中/既刊3
受賞歴 2020年「次にくるマンガ大賞」U-NEXT賞
PV(youtube) 【公式】講談社ヤンマガch
https://www.youtube.com/watch?v=O4-uUKlC0BE

 

人物紹介 諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)1800年前の中国の政治家・軍師。
エピソード 三顧の礼(さんこのれい)/1度でも嬉しいのに3度もされたら応えないわけにはいかない。目下の者にも礼を尽くす、誠意の示し方。

泣いて馬謖を斬る(ばしょくをきる)/身内や親交がある人でも責任はきちんと取らせる。上に立つものは大義を優先し、私情を挟むなという戒め。

言葉 学ぶにあらざれば以て才を広むるなく(才能は学ぶことで身につくもの)

 

1行あらすじ:
「三国志」の天才軍師・諸葛亮孔明(しょかつりょう こうめい)が東京渋谷に転生。

 

ここがポイント:

パリピ×天才軍師×歌姫。孔明がパーティピーポーに?夢を追う女の子の軍師になりクラブシーンで神算鬼謀(しんさんきぼう)を巡らす。テンアゲな異世界転生が今幕を開ける!

孔明──スマホに驚く。天才軍師と言われるがその才は「学ぼう」とする姿勢に由来する。現代日本の知識やクラブミュージックの特性など様々の情報を収集。野外フェスへの参加を取り付けたりと学んだ知識を使い「道」を切り開く。

エイコ──「歌」に救われた。今度は自分の歌でみんなを感動させたい。確かな実力を持つがパッとしない。孔明に会う前からオーデションに応募しているが振るわず、半ば「歌手への道」を諦め掛けていた。

オーナー──三国志の話がしたい。エイコの働くクラブのオーナー。名は小林。見た目はヤクザ。三国志の話ができるバイトを探していた。エイコが連れてきた孔明と夜通し「三国志の話」がしたい。

こんな感じ:
「三国志」のことはよくわからない。「パリピ」のことはもっとわからない。クラブにも渋谷にも行ったことがない。この先も関わることはないだろう、そう思っていた。そんな私が読後「三国志」と「クラブミュージック」に興味が出て、「渋谷」に行って町並みを散策してみたいと思うのだから驚きだ。これだからマンガを読むのをやめられない。私にとって新しい「」を運んでくるのはいつだってこういうマンガだ。

 

 

 

天才軍師・孔明が渋谷のクラブで歌うアマチュア歌手・エイコの歌に「感動」するところから物語の歯車が回り出す。孔明は軍師なので政治家になったり、誰かの参謀ポジションに着き、この現代日本を「変革」していくという流れがテンプレートな異世界転生ものだろう。ところが、孔明は「心震えた」という理由で一般人の女の子の夢を叶えるためだけに知略・智謀をめぐらしていく。この孔明の「動機」が私はすごい好きだ。人を動かすものがお金や権力、欲望や野望ではなく「感動」であるというのが嬉しい。

 

 

 

どうせ天才なんだから、その頭脳がもうチート能力(いかさま)だよ。と思うかもしれないが、そうではない。孔明はとにかく情報を集めている。スマホの使い方・カクテルの作り方・クラブの照明や演出機材・BPMにEDMなど貪欲に学んでいる。「学ぶこと」が才能を開花させると知っているからだ。そしてその才能を「誰か」のために使おうとする姿勢は私たちも見習うべきだ。

 

 

 

集めた情報・学んだ知識をもとに「クラブ」という特殊な環境で自分たちにできる最良の道を探す孔明。理屈や理論、人間心理を計算に入れたその策は「三国志好き」のオーナーですら予想してない結果をもたらす。エイコの歌を聞いてもらうという目的のためにあらゆる手段を取る孔明。ある人物の言によれば諸葛亮孔明は「合理主義の怪物」だという。

 

 

 

最初は「いつまでそのキャラ設定やってんの」と呆れていたエイコもだんだん孔明のことを信頼していく。誰かのために行動し、それが結果を出す。信頼関係の築かれていく見本がここにある。孔明の真っ直ぐな言葉は戦乱の世を生きてきた人生の中で「後悔」していることがあったから。だからこそ、現代では感じたことは相手に率直に伝えたい。社会人になり、言いたいことも言えない世の中(〜ポイズン♪)を生きる「あなた」も、ぜひ孔明の言葉に耳を傾けてほしい。

 

 

 

 

クラブイベントでの成功を収めた孔明。今までにない手応えに驚くエイコ。次なる戦場は「野外フェス」!孔明はどんな「秘策」を講じるのか?エイコの歌はみんなに届くのか?ステージの「地形的不利」に「機材トラブル」の強襲。次巻が気になる……──どうすんの孔明?頑張れエイコ!!

 

 

1話完結
絵がキレイ
パリピの知識
孔明の策略

 

孔明の言葉に思わずハッとさせられる。何よりエイコにかける真っ直ぐな言葉にグッとくる。三国志やパリピに興味がないあなたも、ぜひ読んでみてほしい。孔明が次に何を仕掛けるのかワクワクがとまらないから。パリピ孔明にテンアゲ!

 

⑵「異世界失格」─昭和日本から魔法ファンンタジーへ

 

 

掲載誌 やわらかスピリッツ(webコミック
作者 原作/野田宏(のだひろし)作画/若松卓宏(わかまつたかひろ)
期間・完結 2019年10月〜連載中/既刊3
前作品・他作品 人魚姫のごめんねごはん」(全7巻)
恋は世界征服のあとで」月刊少年マガジンにて連載中〜既刊2巻
PV(youtube) 【公式】BIG COMICS
https://www.youtube.com/watch?v=++&feature=emb_logo

 

人物紹介 太宰治(だざいおさむ)70年前の昭和の作家、走れメロス。
エピソード 【のちのノーベル文学賞作家に脅迫文】/「芥川龍之介」に憧れていた太宰は芥川賞を取りたくてウキウキしていた。候補に自分の名が挙がりドヤ顔していたら落選。作品自体が低評価だったらしいが「太宰くんは私生活に問題あるからねぇ」とコメントした選考委員の一人「川端康成(かわばたやすなり)に逆ギレ。「悪党め、僕はブチギレた、刺す。」という趣旨の脅迫的な文章を当時の文芸雑誌に投稿。川端はこれを大人な対応でたしなめ、太宰へのコメントを一部謝罪。第三回目の選考の際には川端に懇願書(長さ4mに及ぶ泣き落とし的な)を出すほど芥川賞を熱望するも候補にすら上がらなかった。これは芥川賞が新人のための賞であるため。後に『女生徒』という太宰の作品を川端が絶賛しているのでその才能を否定しているわけではなさそうだ。メロスは激怒した、ならぬ「太宰は憤怒した」という逸話である。
言葉 「大人とは、裏切られた青年の姿である」

 

1行あらすじ:
昭和の文豪「太宰治(だざいおさむ)」昭和23年、東京三鷹市、玉川上水にて心中…からの魔法ファンタジー世界へ。

 

 

ここがポイント:

文豪×異世界=心中せねば!? 「先生」と呼ばれる男が入水心中目前にトラックに突っ込まれ異世界へ転移。しかし異世界だろうがなんだろうがその「性根」は何も変わらない。ガイド役の女性司祭や魔物に襲われていたネコミミ娘たちとの出会いでもそれは存分に発揮される。世界を救う使命ではなく、個人的な理由のために旅に出る。彼女たちはひたすらにマイペースな「先生」に心惹かれ一緒についていくが……。

先生──マンガでは明言してないが絶対に「太宰治」。史実では愛人と玉川上水で「心中」、享年38歳。教科書に載っていた「走れメロス」や小栗旬主演で映画化された「人間失格」などが有名。このマンガでの先生の言動のあらゆる全てが彼が太宰治であることを物語っている。太宰治愛にあふれたキャラクター

アネット──出会ってすぐに「先生」に落とされた異世界の司祭兼案内役。真面目な性格ゆえに転生者に抱いていた理想と現実のギャップにどんどん死んだ目に。場末のキャバクラ嬢のような乾いた心が「先生」の言葉で潤いを取り戻し、一緒についていくことを決意。別名「異世界だめんず・うぉ〜か〜」

タマ(仮)──魔物に襲われていた所を「先生」の活躍?で助けられたネコミミの亜人少女。1巻では武闘家と紹介されているが2巻でその出自が明らかに。人懐こく明るい性格だが、実はいろいろ複雑な事情を抱えている。3巻での活躍で、自身の想いと果たすべき役割との葛藤に決着をつけ「前」に進む。成長する少女は美しい。

 

こんな感じ:

異世界に文豪が転移したらどうなるか?文豪の作品にちなんだ特殊な能力で冒険し、魔王を倒し、世界を救うのか?そいう流行りのテンプレートに対して「迷惑だ。やめなさい。」と切って捨てたり、異世界転生者に対する痛烈な皮肉を込めたのがこのマンガ「異世界失格」だ。太宰治ネタに溢れた異世界ギャグでありながら少年マンガに親しんできた人なら一度は憧れる異世界転生勇者という存在へのアンチテーゼ(否定的な主張)でもある。

 

 

主人公の通称「先生」はとにかくやること為すこと全てが「太宰治」。史実にあるようにとにかく死にたがる。享年38歳。記録に残るだけでも4回のガチの「自殺未遂と心中」を起こしている。首吊りに入水、心中相手だけが亡くなり自分だけ生き残ったことも。偏頭痛喀血(かっけつ)するぐらいの病持ちだったので薬を常備していたらしく、特に「カルモチンという睡眠剤(鎮痛剤)の大量摂取による服毒自殺を2回起こしている。このマンガではかりん糖のようにボリボリ食べているが、「太宰治」ならやりかねん……?

 

 

太宰治といえばその「女性遍歴」もたいへんスキャンダラスだ。史実だと次のようになっている。

芸妓の「初代 ……内縁の妻のち心中未遂・離別
カフェの女給「シメ子 ……恋人のち心中(太宰のみ生き残る)
学者の娘「美智子 ……結婚。子供が3人
歌人・作家「静子 ……愛人。子供1人(認知)
美容師「富栄 ……愛人。玉川上水にて入水心中。享年28歳。

 

字面を見るだけでその破滅っぷりがよくわかる。当時の太宰に近しい人は皆こう思っていたはずだ。「ダメだこいつ、早くなんとかしないと………!

 

 

この作品でも1巻から様々な女性たちと「先生」は出会う。異世界で最初に出会う案内役の「アネット」嬢。魔物に襲われていたネコミミ娘「タマ」。迷える王女「シャルロット」。転移者を憎悪する亜人の娘「ウォーデリア」。彼女たちと先生はどのような関係になっていくのか?ぜひ1巻からを読んで確かめてほしい。期待しているのはウォーデリアがいつデレるのなのだが、そうだよね、「憎しみ」って人に何か言われたぐらいじゃ消えないよねー。

 

 

 

史実だけ見ると太宰は女性にだらしないダメ人間に思える。しかし、当時頻繁に使用していた口説き文句が「死ぬ気で恋をしてみないか?」なので言葉通りに心中を繰り返している所を見るとその言動に矛盾がない、「真っ直ぐな男」だったと言えなくもない。いや、世の女性たちから怒られそうだ。ごめんなさい、あいつはクズです。ただ、マンガを読んでもらえればわかるが「先生」は終始一貫している。「僕は僕だ。他人に人生を委ねない。君も自分で決めたらいい」。その言葉と行動に矛盾はなく、病弱なのにストロングスタイルなその「生き様」は自分を押し込めて生きてきた人に大きな影響を与えるようだ。

 

 

「先生」の言葉をきっかけに、自身の鬱屈した想いを吐き出したり、その生き様を目の当たりにして大きな決断をしたりと影響力は凄まじい。2、3巻と物語が進むにつれ、その影響は敵味方関係なくどんどん広がっていく。「興味がある。聞かせたまえ、君の物語を──」と迫るこの男の姿勢は「作家の変態性」と行ってしまえばそれまでだが、案外見習うべき姿勢かもしれない……。

 

 

「先生」が意図しているのかわからないが、本人すら自覚してない「鬱屈」や「歪み」を聞かせてほしいと促し、言葉にすることで本人に自覚させてやるというのは、思いの外「救い」になるかもしれない。さながら決壊寸前の堤防に棒切れで軽く穴を開けてやるように、力を入れず、自然に、ただただ、聞いてやればいい。上から目線のアドバイスなんていらない。「先生」のようにこう言って立ち去ればいいのだ。「どうすればいいのかは、君自身が選択すべきことだ。

 

 

 

1話完結
絵がキレイ
太宰治イズム
ヒモ男への貢ぎっぷり

 

太宰治は「チャンス」という短編で次のように語っている。
「恋愛」とは、1:非常に恥ずかしいものだ。2:色欲のウォーミングアップだ。3:もののはずみ、運命などではなく意思に依るべきだ。4:片恋こそが常に恋の最高の姿だ。 おぉ〜わかりみが深い!というかお前はおれか。そんな太宰イズムをこのマンガから存分に感じて欲しい。

 

 

⑶「JKハルは異世界で娼婦になった」─現代日本から異世界の娼館へ

 

 

掲載誌 ututu(web配信コミック
作者 原作/平鳥コウ(ひらとりこう)作画/山田J太やまだ j た)
期間・完結 2019年6月〜連載中/既刊3
前作品・他作品 作画/山田J太……「あさっての方向」(全5巻・2006年アニメ化)
エコエコアザラREBORN」チャンピオンREDで連載中〜既刊1巻
PV(youtube) 【公式】ututu
https://https://kuragebunch.com/series/ututu
ututuとは? 傷つく者こそ強くなるを合言葉に売春、不倫、虐待、家族、男女など重いテーマを題材にしたwebマンガの新レーベル
娼婦について 性的サービス業に従事する女性。売春婦と呼称したりもするが日本は「売春防止法」(1956年)によりその存在自体が違法。オランダのように国が認めたセックスワーカー「公娼」も世界には存在する。古くは「遊女」現代なら「風俗嬢」が一般的な呼び名。2019年で全国に登録されたソープ店は1222店舗あり、その営業はグレーゾーン。「売春」のための場所を提供するのは違法のため、個室内のサービスはあくまで「女性の裁量」に任せている、という体(てい)で営業している。いわく、個室で出会った男女が盛り上がってその流れで〜らしい。バカじゃないのか?
日本の有名な「風俗街」だと〈すすきの北海道〉〈にぎわいちょう愛知県〉〈よしわら東京〉〈なかす福岡県〉つじ沖縄県〉などがある。
言葉 「時には娼婦のように淫らな女になりな」─なかにし礼(1978年)

1行あらすじ:
女子高校生・小山ハルは日本から異世界に転移、居酒兼「娼館」で働くことに。

 

 

ここがポイント:

JK×異世界×娼婦=これが私の生きる道!女子高校生の「小山ハル」はある日トラックに轢かれ亡くなった。と思いきや異世界に同級生の「千葉セイジ」と共に転移……。異世界お決まりのチート能力はもらって無いし、保護してくれる優しい人格者もいない。生きていくためには稼がなければいけない。手っ取り早くできることといえば……。

小山ハル──とある事情で男性経験豊富な「女子高生」。異世界はよくわからないし、チート能力ももらっていない彼女にとってこの世界はかなり過酷。仕方なく酒場兼娼館で働き始めるが元いた世界の自分とのギャップに泣きそう。だからこそ、「明るく振る舞い」自分を奮い立たせている。異世界の男尊女卑はびこる常識にウンザリしている。

千葉セイジ──ハルと一緒に異世界転移してきた「同級生」。スクールカースト的にはてっぺんと底辺の関係だったらしいがその時からハルに好意を持っていた様子。ハル目線で描かれる千葉の、痛々しく思い上がった勘違い野郎ぶりは、全男性諸君に「我が身を振り直させる」絶好の機会になるだろう。本人はチート能力をもらい異世界を満喫している。

男尊女卑──だんそんじょひ。基本的に社会は「男」が優位になるように作られている。それが常識となり無意識と無自覚の差別が問題になり始めた現代。男女雇用機会均等(1985年)と男女共同参画社会(1999年)の成立や国際的な機運も手伝い、近年、女性をその性で差別することが「意識」されるようになってきた。古い常識の上で胡坐をかくおじさん達はこの流れに恐れおののいている。私としては「女性」にはこうべを垂れて生きていたいが、「女性差別」を許すな!と声高に叫ぶ風潮は好きじゃない。気づいたら、女性が優位に立っているというような強かな(したたかさ)を見せて欲しい。敵じゃなく、味方を作れ。

 

こんな感じ:

あなたが知らない土地で1人、お金もなく放り出されたらどうするだろう?─警察?そんなものはいない、泣いても誰も助けてくれない。腹は減る、安全な寝床が欲しい。とにかく先ずは稼がなければ。やりたいわけじゃ無いけど、「できる」からやる。多分、人よりはうまくできる「自信」があるからやるのだ。ハルは「これしかできないから」なんて卑下しているが彼女からはどんな場所でも自分らしく生きていくだけのバイタリティ(生命力)を感じる。

 

 

「風俗嬢」こそがサービス業において一番「適性」を必要とする職業だと思っている。見目の麗しさなんてのは生まれ持った才能だし、スタイルだって維持するのに節制とトレーニングが必要だ。何より「お客様」のプラスもマイナスも文字通りその身に直接受けるのだから肉体と精神のタフさが必要だ。辛く惨めな状況でも、やらされているのではない、私がやっているんだというハルの強いプロ意識はどのような職業であれ見習うべき姿勢だ。

 

 

男達の思い上がりと自分勝手な盛り上がり、ビジネスライクな笑顔で割り切っていても、心は確実にすり減っていくものだ。ハルにいくら適性があっても毎日これでは心身ともに持たない。なので、たまには「おいしいご飯」が食べたい。「女子会」だって開いちゃおう。「やったことない料理」だって覚えて仕事に前向きだ。男尊女卑な常識が邪魔してもキラキラした毎日が送りたい。JKハルは異世界でもキラキラしていたいのだ。

 

 

 

弱気な自分を奮い立たせるハルだがやはり「不安」に襲われふさぎ込んでしまうことも…。それは現代を生きる私たちだって同じことだ。「未来」への不安が頭をもたげ始めた時ついつい「楽な方」へふらふらいってしまう。(大抵、ろくな結果にならない)疲れ果て、擦り切れた心は「拠り所」を求めているし、どうしようもない状況には死にたくなる。いったいどうしたらいいのだろう。こんな時、異世界で娼婦として強く生きる彼女ならどうしているのだろうか─。ふさぎこんだまま誰か王子様が救いに来るのを待っているたまか?寄る辺ない異世界で生きていく「小山ハル」がこの先どんな道を辿るのか、見届けたい。立ち上がれ、ハル!

 

 

 

1話完結
絵がキレイ
異世界無双
生きづらさ

 

エッチな展開を期待していた男性陣はガツンとやられ、大いに反省して欲しい。JKハルのたくましさと仕事に対する「プロ意識」はお仕事マンガとしても共感できるものだ。しかし、「傷つく」ハルの姿に心苦しくてその先を読むのをためらうこともある。「残酷な世界」は、がんばる私たちを褒めてくれないけど、それでも「私らしく」生きたいと願う人たちにこのマンガをおすすめしたい。JKハルは異世界でもキラキラしたい、ワクワクしたい、私だってそうだ──。あなたはどうだ?

 

おわりに──異世界でも現代でも…

 

パリピ孔明」「異世界失格」「JKハルは異世界で娼婦になったを改めて読み直してみた。天才軍師とダメ男作家に普通の女子高生。一見ばらばらな属性の彼らだ。しかし、そこには自分自身の進むべき「道」を持っているという共通点がある。

学ぶことが才能を開花させ将来への「道」を切り開くのだと教えてくれる孔明。君の物語を聞かせてくれとひたすらに作家たる自分の「道」を突き進む先生太宰治。心折れそうな異世界でも自分を鼓舞し、これが私の生きる「道」と明るく振る舞うハル。

彼らは私たちに「道」を示す。その物語は読者を勇気付け、周りが見えなくなっている人たちに生きるヒントをくれる。

 

 

孔明みたいに色んなことを「学んで」いけばいつか役立つ時が来るかもしれない。毎日、理不尽なことばかり言って来る上司には先生みたいに言ってやる「そんなことは知らん!」と。誰も頼る人がいなくて、将来が不安になって落ち込む時はハルの「キラキラしたい」と明るく振る舞う姿を思い出そう。

よし、大丈夫。彼や彼女たちに比べたら私なんてまだまだだ。明日からも、また頑張ろう。きっといいことがある。目頭を熱くしてそう思える。

 

「オーバーロード」や「ゲート」がアニメでヒットした2015年。その頃から私はたくさんの異世界漫画を読んできた。「このすば」「リゼロ」「幼女戦記」などは原作小説も全巻揃えるハマりっぷりだった。それらはアニメ化し、その界隈では大ヒットを記録した。「異世界スマホ」「デスマ」「盾の勇者」「無職転生」「転スラ」など有名どころから、タイトルが長過ぎるのと欲望が透けて見えるのとでよく覚えていないタイトルの作品、それらたくさんの異世界漫画が世に放たれ、それらをむさぼるように読んだ。

いわゆる「なろう系」小説を原作とした漫画は、主人公が最初から強く、都合がよく、物語にストレスがないのが特徴だった。そのキャッチーさに惹かれていたのだが、思い返すと当時は仕事のストレスが酷くて、半分鬱状態だった。それも「ストレスのない」異世界漫画を求めた要因のように思う。

それから数年後、私はその「ストレスのない物語性」に逆にストレスを感じるようになってきた。嫌気というか、いい加減にしろよ、お前ら。といいたくなったのだ。確かに憧れていた。自分に都合のいい世界、苦労なしで手に入れた能力、ちやほやされる自分。新しい人生でなら俺だってもっと上手くやれると、異世界マンガに夢中になっていた。

だけど、もういいだろう──もう1人の私が語りかけてくる。いつまで現実逃避している。異世界?ここが「お前の異世界」だ。お前自身が試される、お前に優しくない、異世界だ。能力?ないよ、そんなの。わかっているはずだ。「」を切り開くのはチート能力でも新しい人生でもなく、今、ここにいる自分だということを。

 

 

異世界無双マンガは読むのが非常に楽だ。だいたいお決まりのパターンで、美味しいとこどりの起承転結の「起と結」しかないからだ。そういうのを世間が求めているのもよくわかる。だけど100タイトル以上の異世界マンガを読んだ「私の記憶」にそれらの物語はほとんど残っていない。

確かに読んだはずなのに内容が全く思い出せないのだ。無双やチート、特殊な能力や知識でうまくやっていこうとするマンガは何も残らなかった。逆に異世界でも結局自分自身と対峙し、苦しみながらそこから「前」に進もうとする主人公たちがいるマンガが私に「勇気」や「知恵」を与えてくれていた。

 

 

面白いとか面白くないとかは異世界ものや能力バトル等の「ジャンル」に全く関係ない。その時あなたが求めているものを与えてくれるマンガがあなたにとって面白いのだ。進撃の巨人だって鬼滅の刃だって読むのがきつい、面白くなかったという人も当たり前にいる。その時のあなたは「そういう物語」を求めてなかった、そういうことだろう。

異世界でチート(ズル)したり、転生して新しい人生を上手いことやり直すようなマンガを求めていた時期が私にもあった。だけど、もう大丈夫だ。そういった異世界無双系漫画はしばらくお休みしよう。今欲しいのは「」でも「憧れ」でもない、明日を切り開く「知恵と勇気」なのだ。

 

 

異世界だろうが現実だろうが結局自分は自分。何も変わらない。試されるのはいつだって「私」だ。孔明や先生やハルのように私の生きる「道」は私が切り開くのだ。がんばれ俺、このマンガを読んで明日を生き抜け!

 

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