漫画やアニメが好きな人でCLAMP(クランプ)作品に触れたことがない、という人はおそらく日本に存在しない…と私は勝手に思っているのだが、それほどに「CLAMP」は性別・年代問わず、作品の幅が広い。同人誌界隈からその活動はスタートし、少女漫画、アニメ化、少年漫画、キャラクターデザイン、青年誌などなど、私が知っているだけでも数え切れないほど作品のフィールドがある。今回はその中でも私の人生の「道しるべ」とも言える作品xxxHOLiC(ホリック)を紹介したい。

 

「CLAMP」とは?

 

※公式のホームページより。

 

CLAMP(クランプ)……日本を代表する女性漫画家集団。アシスタントを入れず、ストーリー担当の「大川」と作画担当の「いがらし」「猫井」「もこな」の4人で作品を作っている。日本に生きるオタクでCLAMP作品に触れたことがない人はおそらくいない。同人誌・少女マンガ・少年漫画・青年誌と性別年代問わず作品の幅が広い。

どの作品にも「物語は偶然ではなく必然で動く」「死んだ者が生き返ることは決してない」の世界観が通底している。有名な作品は以下、ほとんどアニメ化している。

 

東京BABYLON』(1990年~月刊ウィングス連載)→2021年アニメ制作中 

魔法騎士レイアース』(1993年~なかよし連載)→1994年アニメ化

 

 

 

私の実家の食器棚に貼られた「レイアース」のシール。少なくても25年以上前のもの。姉が雑誌の付録シールか何かを貼ったものと推測される。

 

 

カードキャプターさくら』(1996年~なかよし連載)→1998年アニメ化

 

 

講談社の少女マンガ雑誌「なかよし」連載・THE少女漫画といったかわいらしい絵柄。

 

XXXHOLiC』(ホリック)(2003年~ヤングマガジン連載)→2006年アニメ化

ツバサ-クロニクル』(2003年~週刊少年マガジン連載)→2005年アニメ化

 

・キャラクターデザインも多く手掛けている。CLAMPを知らなくてもアニメを通してその絵柄を見たことがある人も多いだろう。

コードギアス 反逆のルルーシュ
(2006年~)キャラクターデザイン原案・エンディングイラスト担当

 


「コードギアス」の共犯コンビ「ルルーシュ」と「C.C.」。ちなみにルルーシュ役の福山潤と生徒会長ミレイ役の大原さやかさんは『xxxHOLiC(ホリック)』の四月一日侑子さんのアニメ版声優でもある。

 


アニメ情報雑誌『Newtype(ニュイータイプ)』にマンガ連載していたCLAMP作品「こばと」。こちらも2009年にアニメ化

 

他にも『魍魎の匣』(2008年)、BLOOD-C』(2011年)カブキブ!』(2017年)などアニメキャラクター原案・ストーリー原案を担当している。

 

 

小説版「xxxHOLiC」副題は「アナザーホリック ランドルト環 エアロゾル」by西尾維新。ちなみに同時に出た「デスノート」の小説版もマンガ大好きの西尾維新が書いている。

 

CLAMP作品には人気キャラが他作品に”別人として”登場する「スーターシステム」がとられ、物語の世界が繋がっていることを感じさせる。xxxHOLiC(ホリック)の言葉を引用するなら「同じではないけれど、違う世界で生きるあなたたち」──その作品を知らなくても話の都合上問題ないのだが、CLAMP作品を網羅している読者にはニヤリとする場面が多い。(特に『ツバサ-クロニクル』では、前後の脈絡や伏線関係なく他作品のキャラクターが突然現れ、その作品を知ってれば「あぁ、あのことか!」とビビッとくる意味深なセリフを吐いて立ち去る印象がある。

 


「カードキャプターさくら」の主人公さくらと小狼(シャオラン)がスターシステムで新たな物語を紡ぐ。

 

HOLiCとは?

 

 

【HOLiC】ホリック。日本語で「中毒」の意味。病んでいる人を指して〇〇中毒ということが多い。お酒がやめられない人をアルコール中毒、生活や健康を犠牲にしてでも仕事をする人をワーカーホリックなどという。2020年代だとネット上で人の粗探しや正義感を盾に暴言を吐き、快感を得る中毒者を「ネット警察」と呼んだりする。昔と変わらず、現代のHOLiCも人の業に深く関わるものが多い。

 

掲載誌 「ヤングマガジン」「別冊少年マガジン」2003年〜全19
コミック16巻・186話からはタイトルに「籠(ロウ)」が付く。
作画 男性キャラクターを猫井が、女性キャラクターをもこなが担当している

日本の絵巻物風に淡々と物語を進めるためにスクリーントーンの禁止、斜めコマ割りの禁止を制約づけた作画になっている。

 

関連作品

 

同時期の2003年から少年マガジンで連載していた「ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-」とヤングマガジンで掲載していた「xxxHOLiC」は物語が関連しており、本作に度々「ツバサ」のキャラクターが登場する。

2013年から続編「xxxHOLiC・戻(レイ)」がヤングマガジンで掲載、既刊4巻で2017年から休載している。

2012年に公開された劇場版 BLOOD-C 」では主人公の小夜(さや)がミセを訪れるシーンがあり、本作の登場人物がゲスト出演している。

 

1行あらすじ:怪しいミセ(店)でバイトすることになった霊感体質の少年の話。

 

 

こんな話:対価と引き換えに願いをかなえる『ミセ』がある。そこを訪れる客は何かいわくつきで、妖しい雰囲気を漂わせている。バイトとして働く霊感体質の四月一日君尋(わたぬききみひろ)はそれに関わり不思議な体験をする。ミセの店主である壱原侑子(いちはらゆうこ)は選択すべき「未来」へと彼を導いていく。

 

 

私の思い出:当時22歳だった私は神奈川県・箱根市に居た。21の時に作った悪徳業者への200万の借金を完済後、知らない土地で一からやり直そうと決意し、温泉旅館で住み込みで働いていた。その頃は将来への「不安」が常に頭をもたげ、必死に働くことでそれを振り払っていた。しかし、慣れない仕事、馴染みのない土地や知り合いのいない環境にどんどんストレスが溜まっていく…自分の中に澱のように溜まっていく言語化できない「言葉」や、吐き出すことのない「気持ち」を抱えて潰れそうになっていた。そんな時、心の支えになっていたのが週一で発売されるヤングマガジン連載の「xxxHOLiC」だった。単行本でいえばちょうど12巻から13巻の間、「五月七日こはね」編の佳境だった。当時の生活のことはもうあまり覚えていないが、短い昼休みの間に、他の従業員の目を盗むように、底冷えのする薄暗い畳の部屋で、こっそりヤンマガを読んでいた覚えがある。自分には全く関係ない虚構の「物語」がなぜ心の支えになるのか?それは一言ではいえないが、きっと「信じて」いたからだと思う。信じている、物語の主人公たちのように、「私にも」まだ、選べる未来があるはずだと。まだ、ここで頑張っていけるはずだと──。「xxxHOLiC」を読むと、そう自分に言い聞かせていたあの頃を思い出す。

 

勇気をもらった言葉。物語を通して自分を鼓舞していた20代の在りし日。

 

 

【キャラクター紹介】

日君尋(わたぬき きみひろ)4・1

 

あやかしに縁がある男子学生・料理が得意。

ネガイ:あやかしを視て、惹きつける体質を直したい。
対価:バイトとしてミセの家事全般、特に料理をすること。

 

原侑子(いちはら ゆうこ)1→偽名

 

ネガイを叶えるミセの店主・大酒飲みのミステリアスな女性。

コトバ:「この世に偶然なんてないわ、あるのは必然だけ」

 

目鬼静(どうめき しずか)100

 

同級生・弓道部でお寺の子。

コトバ:「違う、選んだだけだ」

 

軒ひまわり(くのぎ ひまわり)9

 

同級生・ツインテールの女の子。

コトバ:「会えて幸せだって言ってもらえたのは初めてだったよ」

 

日小羽(つゆり こはね)5・7

 

小学生・霊能力をもつ女の子。

コトバ:「私の好きなひとに痛いことしたのは‥‥許さない」

 

 

ここがポイント:xxxHOLiC」には3つの物語の軸がある。

 

1つ目アヤカシやユーレイの不思議(ふしぎ)な話。

エンジェルさん」‥‥コックリさん、キューピッドさん、呼び名をは変われど「危ない」のは変わらない降霊術。ひまわりちゃんの依頼を受け、夜の校舎に忍び込むと3人の女子生徒が「エンジェルさん」をやっていた。だけどなんだか様子がおかしくて……。

「エンジェルさん」帰ってくれないの!

xxxHOLiC3巻より

 

爪切り」‥‥夜に爪を切ってはいけないよ、なぜなら親の死に目に会えないから。私も小さい頃そう言われたことがある。昔から伝わる不便な時代の教訓だと思っていた。だけど、他にも「理由」があるとしたら?誰かが暗号のように忍ばせ、伝えようとする「何か」の存在とは……。

「夜、爪を切っちゃダメってのは…」
「そう、アレが来るから」

xxxHOLiC6巻より

 


つ目はヒトのもつ業(ごう)に関する話。

クセ」‥‥嘘をつくことで失うものがある、背負うものもある。しかし、そのひとにとって「それ」がどうでもいいことなら他人が指摘してもどうしようもない。けれど、そのクセはいつか致命的な一撃となってあなたに降りかかるかも……。

 

クセっていうのはね、他人のために直すものじゃないの
自分のために直すものなのよ

xxxHOLiC1巻より
コトバ」‥‥自分を縛り、他人をも縛る見えない鎖。誰もかれも知らず知らずのうちに縛り合っている。しかし、そこから解放するのもまた「コトバ」なのだ。あなたが「変わり」たいのなら、まずはコトバを変えよう。

「コトバ」は生きているの
そして時には人の生き筋すら縛る

xxxHOLiC4巻より


つ目はそれらを通してワタヌキが変わり、その運命(うんめい)を選び取っていく話。

女郎蜘蛛(じょろうぐも)編」……蜘蛛に「恨み」を買い、片目をふさがれたドウメキ。それを知ったワタヌキがとった「ある行為」の影響がドウメキやアヤカシの世界を巻き込んで波及していく。その結果、ワタヌキはあるものを失うのだが、自ら気づくことができた。それは───。

 

 

 

「右目は無くなったけど、
分かった事がありますから

xxxHOLiC8巻より
九軒ひまわり編」……長い伏線だったひまわりちゃんの「秘密」が明かされる。もう、気づかなかった頃には戻れない。この件をきっかけに変わりはじめるワタヌキやドウメキたちの運命。何を選び、何を背負い、生きていくことにしたのか。泣きながら、でも笑えるように──。

「四月一日君の嘘ツキ
泣かせないって言ったのに」

xxxHOLiC10巻より
この後に「五月七日こはねが佳境に入り、ワタヌキたちの運命は加速していく。個人的には、13巻でひとつの区切りがついたと思っている。ハッピーエンドとは言わないが、それぞれがいい方向に向け歩み始めたエンドで満足していた。私の中では13巻までが「第一部」。ここで終わっても良かった。
けど物語は続いていく。不穏な空気が漂う14、15巻が「選択」への準備期間だとして、タイトルに籠(ロウ)がついた16巻から最終19巻は「第二部」だったと思う。2003年から約8年間の連載を終え、2013年に始まった続編の戻(レイ)の既刊4巻は私の中では「第三部」になる。2017年から休載中のこの続編、先生方にはゆっくりでいいので、ぜひ続きを書いて欲しい。
15巻の表紙は侑子さんと四月一日が飾っている。それまでの表紙も表が侑子さん、裏には四月一日と2人が揃っているのが当たり前だった……。
16巻の表には四月一日、裏には後ろ姿の侑子さん。この巻を機に表紙から侑子さんの姿が消え、四月一日が1人になる。
物語的にリンクしていた「ツバサ」がの物語だとするなら、「xxxHOLiC」は終わりがハッキリとしないの話だったと、公式のガイドブックで作者たちが語っている。確かに後半の展開はハッピーエンドとはほど遠く、「え、これで終わるの…いや、続いていくのか?」と困惑した覚えがある。ひどく物悲しくて胸が締め付けられた。
結局のところ、これは「四月一日」が選ぶ運命の話だった。その選んだ「道」はいつになるかわからない遠い遠い「未来」で、そこにはゆっくり流れる憂いと切なさがある。私はそれを「残酷」だなと感じた。でも、同時にこういうのが人生なんだとも思う。ハッピーエンドなんてない、選んだ先に続いていく長い長い「この先」があることを認識しないといけない。良かったのか、悪かったのか、答え合わせは死ぬ時だろうか?わからない、だから、進もうと思う。
四月一日が決めたように、自分の進む道を信じて。

 

必然とは?

 

必然(ひつぜん)】……当然そうあるべきこと。それ以外のあり方ではあり得ないこと。ある現象からそうあるより他にありようのない他の現象が起きること。(講談社・国語辞典デスク版第2版より)

人生で起きる全ての出来事には意味があるってこと

xxxHOLiC1巻より/壱原侑子

これには意味があるのではないかと気づいたなら、その気付きにこそ意味がある。何故?と考えることにこそ意味があると私は思うんだが、どうかな

xxxHOLiC10巻より/百目鬼遥

 

選択とは?

 

選択(せんたく)】……いくつかの中から、良いものや適当なものを選び取ること(角川・必携国語辞典より)……一定の立場のもとに不要なものを捨て、必要なもの正しいものを選び取ること。(小学館・デジタル大辞泉より)

 

気づかなかった頃にはもう戻れない。
後は、君が選ぶことだ。

xxxHOLiC10巻より/百目鬼遥

なんで、おれが決めてないことで おれの…!
俺の大事なひとの何かが決まるんですか!?

xxxHOLiC15巻より/四月一日君尋
こうして「xxxHOLiC」を読み直してみると自分の考えだと思っていたことの源流がここにあったのだと改めて気づくことができる。自分の人生で起きることは「必然」であり、その中で「選択」していくことが大事なんだと、そしてそこには「痛み」や「苦しみ」があるのだと。「悔い」があるのは当然で、それでも自分が選んだ道を進むのをやめるな、と誰かが言っている気がするのは私の幻聴だろうか?
「xxxHOLiC」を誰かにおすすめする上でネックだったのがこの後半の悲しい展開。いや、そう感じるのは私だけで、これはこれでコーヒーのような苦さと味わいがある大人な物語なのかもしれない。10年前に私の人生に「道しるべ」ともいうべき影響を与え、今もその影響は続いている。これが私には「必要」だったのだと納得し、道を「選んで」前に進んでいる。5年後はどうだろうか?さらに10年後は?
その時はまた、「xxxHOLiC」を読み直して、答え合わせができたらいい。あなたにもぜひ、読んでほしい。四月一日君尋(わたぬききみひろ)が運命を選択するまでの不思議で、優しくて、怖くて、温かい、──でも、「永遠」に触れてしまい、泣きたくなるような、そんなお話を。
1話完結
絵がキレイ 頭身の高い独特の絵柄、スッキリしている。
オカルト
人の業

 

あと、アヤカシの女の子たちが可愛い。四月一日のことが好きな座敷童(ざしきわらし)も可愛いいけど、悪役の女郎蜘蛛(じょろうぐも)も魅力的。でも一番惹かれるのは、雨童女(あめわらし)なんだよな。何故だろう、ゴスロリが性癖なのだろうか?ついでにあのうるさい感じも好き。Mなのか?

 

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